相続土地国庫帰属制度のデメリット:使えない土地・費用・期間と、使えなかったときの次の手
PRこの記事にはプロモーション(広告)が含まれています。リンクから申し込みがあると、当サイトが広告主から報酬を受け取ることがあります。紹介する順番や評価は報酬で決めていません。広告掲載について
目次
相続した土地を国に引き取ってもらえると聞いたものの、建物がある、境界があいまい、費用がいくらかかるか分からない、と申請の手前で止まっていませんか。法務省のページで確かめた要件・費用・期間を表にしたので、自分の土地で申請を検討するか、ほかの手放し方に進むかを決められます。
この記事の結論
- 建物がある土地、担保権が付いた土地、通路などで他人が使う土地、土壌汚染のある土地、境界が明らかでない土地は、申請しても却下されます(法務省)。建物は登記がなくても、建っていれば申請できません。
- 国に払うお金は、審査手数料(土地1筆14,000円)と、承認されたときの負担金(20万円が基本。市街化区域などの宅地・農地と森林などは面積に応じた額)です。手数料は、却下・不承認・取下げでも返ってきません。
- 審査の標準処理期間は8か月です。承認後は、負担金の通知が届いた翌日から30日以内に納めないと承認が失効します。
- 法務省の統計(2026年9月30日現在)では、申請6,125件のうち帰属は3,231件、取下げは1,162件で、取下げの半分ほどは「有効活用の見込みが生じた」ことによるものです。
- 使えない土地なら、建物つきのまま買う業者、隣地の所有者、自治体の空き家・空き地バンクに当たります。申請の前に同時に確かめておくと、手数料を払ってから行き詰まるのを避けやすくなります。
自分の土地は、この制度で申請できますか?
相続か、相続人への遺贈で土地を取得した人なら申請できます。ただし、下の「却下」に当たる土地は申請の段階で受け付けられず、「不承認」に当たる土地は審査のあとで承認されません(法務省)。制度が始まった2023年4月27日より前に相続した土地も対象です。
右の列は、法務省の統計(2026年9月30日現在の速報値)で、その理由で却下・不承認になった件数です。1つの申請に複数の理由が当たることがあるため、合計は却下・不承認の件数と一致しません。統計の項目を、左の区分に当サイトが並べ直しています。
| 区分 | 当たる土地(法務省の表記を要約) | 統計の件数 |
|---|---|---|
| 却下(申請できない) | 建物がある土地(登記がない建物も含む) | 4件 |
| 担保権や使用収益権が設定されている土地 | 統計の項目なし | |
| 他人の利用が予定されている土地(現に通路・水路・ため池などに使われている土地など) | 通路22件、水道用地・用悪水路・ため池1件 | |
| 土壌汚染されている土地 | 統計の項目なし | |
| 境界が明らかでない土地、所有権の存否や範囲に争いがある土地 | 境界23件 | |
| 不承認(審査で承認されない) | 一定の勾配・高さの崖があり、管理に過分な費用・労力がかかる土地 | 7件 |
| 管理・処分を妨げる工作物・車両・樹木などが地上にある土地 | 49件 | |
| 除去しなければならない有体物が地下にある土地 | 3件 | |
| 隣接する土地の所有者などとの争訟によらなければ管理・処分ができない土地 | 通行の権利が妨げられている4件、使用・収益が妨害されている8件 | |
| その他、通常の管理・処分に過分な費用・労力がかかる土地 | 災害防止の措置が必要11件、国による追加の整備が必要な森林37件、帰属後も金銭債務を負う土地12件 |
このほか、却下の理由として「申請の権限を有しない者による申請」11件と「添付書類の提出がなかった」37件が統計に載っています。
樹木については、法務省のQ&Aが、果樹園の樹木や、民家・公道・線路などの近くにあって倒木のおそれがある枯れた樹木、放置車両などを例に挙げています。境界は、申請者が認識している隣地との境界が現地で確認でき、その境界について隣地の所有者と認識の違いや争いがないかで判断されます(法務省のQ&A)。
国に払うお金は、いくらですか?
審査手数料と負担金の2つです。負担金は、国が管理する10年分の標準的な費用を考えて決められた額で、承認された土地にだけかかります(法務省)。
| お金 | 額 | 払う時期と注意 |
|---|---|---|
| 審査手数料 | 土地1筆ごとに14,000円 | 申請のときに納める。取下げ・却下・不承認でも返ってこない |
| 負担金(宅地) | 面積にかかわらず20万円。ただし市街化区域・用途地域が指定された地域の宅地は面積に応じた額 | 承認後、通知が届いた翌日から30日以内。納めないと承認が失効し、もう一度申請し直すことになる |
| 負担金(田・畑) | 面積にかかわらず20万円。ただし市街化区域・用途地域の農地、農用地区域・土地改良区域などの農地は面積に応じた額 | |
| 負担金(森林) | 面積に応じた額 | |
| 負担金(その他。雑種地・原野など) | 面積にかかわらず20万円 |
面積に応じた額は、面積に単純に比例するのではなく、面積が大きくなるほど1m²あたりの額が下がる仕組みです(法務省の資料)。自分の土地の額は、法務省の負担金のページにある自動計算シートで確かめられます。隣り合う同じ種目の土地が2筆以上あるときは、1つの土地とみなして負担金を計算するよう申し出ることもできます(宅地と森林のように種目が違う組み合わせは対象外。法務省)。
国に払うお金のほかに、建物があれば解体の費用、境界があいまいなら境界を確かめる費用、書類の作成を頼むなら専門家の報酬がかかります。書類の作成を代わりに頼めるのは弁護士・司法書士・行政書士に限られ、申請そのものは所有者本人か法定代理人がします(法務省のQ&A)。これらの額は土地ごとに違い、公的な目安は出ていません。
モデルケース: 更地を1筆、負担金が20万円の土地で申請する場合
次の条件は、お金の流れを説明するための架空の例です。市街化区域の外にある宅地を1筆相続し、建物はすでになく、境界は隣地の所有者と確かめてある、と仮定します。
- 申請のとき: 審査手数料14,000円。
- 承認されたとき: 負担金20万円を、通知が届いた翌日から30日以内に納める。
- 国に払うお金の合計は21万4,000円です。仮に不承認になった場合、14,000円は返ってこず、土地は自分のものとして残ります。
建物を壊す前の土地なら、この合計に解体の費用が加わります。解体してから申請するか、建物つきのまま買う相手を探すかは、使えなかったときの次の手と比べて決めてください。
申請から引き取りまで、どれくらいかかりますか?
審査の標準処理期間は8か月で、事案によってはそれを超えます(法務省のQ&A)。流れは次のとおりです(法務省のパンフレット)。
- 土地がある都道府県の法務局・地方法務局(本局)に、予約して相談する。相談は対面・電話・ウェブから選べ、1人1日1回30分。支局・出張所では受け付けていません。
- 承認申請書を出し、審査手数料を納める。
- 関係する省庁・自治体への情報提供と、隣地の所有者への通知が行われる。
- 法務局の担当官が、書面と現地で調査する。
- 承認されると、承認と負担金の通知が届く。
- 30日以内に負担金を納めた時点で、土地の所有権が国に移る。
相続登記がまだでも、相続や遺贈で取得していれば申請できます。その場合は、戸籍などで所有者であることを示す書類を付けます。ただし、取下げ・却下・不承認になったときは土地が自分のものとして残るので、相続登記が必要になります(法務省のQ&A)。相続登記の期限と進め方は相続した実家で最初にやる手続きにまとめています。
デメリットは、結局どこにありますか?
使う人にとっての負担は、次の6つに分けられます(法務省の記載をもとにした当サイトの整理)。
| デメリット | 中身 | 先に確かめること |
|---|---|---|
| 建物があると使えない | 原則として建物を取り壊してから申請。滅失登記も原則として所有者がする | 解体の費用と、建物つきで売れる相手がいないか |
| 手数料が返ってこない | 却下・不承認・取下げでも14,000円(1筆ごと)は戻らない | 却下・不承認の事由に当たらないかを、事前の相談で確かめる |
| 土地の条件が厳しい | 境界・通路・樹木・工作物などで、却下・不承認になることがある | 境界を隣地の所有者と確かめられるか、木や放置物を片付けられるか |
| 共有なら全員がそろう必要 | 共有者全員で申請する。1人でも同意しなければ申請できない | 共有者の意向。持分だけの売却も比べる |
| 時間がかかる | 標準処理期間8か月。その間の固定資産税や管理は自分で続ける | 年間の維持費と比べて、待てるか |
| 手放すにもお金がかかる | 負担金は20万円が基本で、面積に応じて高くなる土地もある | 自動計算シートで負担金を出し、維持費や売却と比べる |
申請のあとで売る相手が見つかった場合は、売る前に申請を取り下げます。取り下げずに売ると、申請の権限がなくなり却下されます(法務省のQ&A)。また、偽りや不正な手段で承認を受けたことが分かると、承認が取り消され、損害賠償の責任を負うことがあります(同)。
共有で全員がそろわない場合は、自分の持分だけを売る道もあります。進め方は共有持分だけを売る道で分けています。
相続放棄とは、何が違いますか?
相続放棄は、亡くなった人の権利と義務を一切受け継がない手続きで、土地だけを選んで手放すことはできません(裁判所)。相続が始まったことを知った時から3か月以内に、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所に申し出ます。費用は申述人1人につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手です(裁判所)。
国庫帰属制度は、相続した財産のうち土地だけを国に引き取ってもらう制度なので、ほかの財産を受け継いだうえで使えます(当サイトの整理)。預金なども含めて放棄するかどうかは、期限が短いため、早めに弁護士・司法書士か家庭裁判所の案内で確かめてください。
公開データ: 申請したあと、どうなったか(法務省の統計)
法務省の「相続土地国庫帰属制度の統計」によると、2026年(令和8年)9月30日現在の速報値で、申請は6,125件(田・畑2,372件、宅地2,135件、山林928件、その他690件)、国庫に帰属したのは3,231件です。却下は86件、不承認は103件でした。取下げは1,162件で、内訳は「有効活用の見込みが生じた」595件、「却下・不承認であることが判明した」415件、その他152件です。却下・不承認に当たると分かって取り下げた申請が415件ある、ということです。申請の前に、法務局の相談で却下・不承認の事由に当たらないかを確かめ、同時に隣地の所有者や自治体にも使い道を聞いておく、という順番が考えられます(当サイトの読み方)。
出典: 法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」(2026年10月26日に確認)
使えなかったときは、どこに当たればよいですか?
却下・不承認の理由によって、次に当たる先が変わります。下の対応は当サイトの整理で、同時に進めてもかまいません。
| 使えなかった理由 | 次に当たる先 | 確かめること |
|---|---|---|
| 建物がある(壊したくない・壊す費用が出せない) | 建物つきのまま買い取る業者 | 建物や家財をそのまま買い取るか、査定の費用 |
| 境界が明らかでない・隣地と争いがある | 隣地の所有者 | 境界の確認から始められるか。買う・使う気があるか |
| 通路などに使われている | その土地を使っている人・隣地の所有者 | 今の使い方のまま引き取る相手がいるか |
| 樹木・工作物・放置物がある | 片付けてから再申請するか、買取業者 | 片付けの費用と、再申請の手数料(1筆14,000円) |
| 共有者の同意がそろわない | 自分の持分だけを買う業者、弁護士・司法書士 | 持分の売却で家族の関係に影響しないか |
| 農地・山林で引き取り手がない | 農業委員会、市町村の林務の担当、森林組合 | 買い手・借り手を探す方法。森林の届出 |
自治体への寄付も候補に挙がりますが、受け入れは自治体の基準で決まります。たとえば名古屋市は、市の事業に使える土地か、処分(換価)が容易と見込まれる土地を受け入れの基準にし、境界が未確定な土地、抵当権などが設定された土地、維持管理が難しい土地や土壌汚染・崖崩れのおそれがある土地は受けられないとしています(名古屋市)。国庫帰属で却下・不承認になった理由と重なる項目が多いため、同じ理由で寄付も断られる可能性が高いと考えておくのが現実的です(当サイトの読み方)。
家として使える建物が残っているなら、自治体の空き家・空き地バンクに載せる道もあります。利用の条件は自治体ごとに違い、県外・市町村外からの利用者に限っている自治体もあります(国土交通省)。土地がある市区町村の担当課で確かめてください。農地・山林の届出や手放し方の違いは、田舎の土地が売れないときの手放し方で土地の種類ごとに書いています。
建物つきのまま手放す相手を探すなら、訳あり物件の買取業者に査定を頼む方法があります。業者ごとの対応の違いは訳あり物件の買取業者の比べ方で横並びにしています。
向いている人
- 建物が建ったままで、解体して国庫帰属を申請するか、そのまま売るかを比べたい
- 家財が残っていて、片付けの費用を先に出したくない
- 共有名義で、全員がそろわず国庫帰属を申請できない(持分だけの相談)
向いていない人
- 山林や田・畑だけを手放したい(→ 買取が難しい場合があると業者自身が書いているため、農業委員会や市町村の林務の担当、土地の種類ごとの手放し方へ)
- 建物のない土地で、却下・不承認の事由に当たるか分からない(→ 先に土地がある都道府県の法務局(本局)に予約して相談)
- 相続放棄を考えている(→ 3か月の期限があるため、先に家庭裁判所の案内か弁護士・司法書士へ)
国庫帰属が使えない土地を業者に相談すると、安く買いたたかれたり、営業の連絡が続いたりしないかと迷っている人へ
解体や片付けにお金をかける前に、建物つきのままでいくらになるかを確かめられます
- 費用
- 「査定は無料となります」と公式のよくある質問に書かれています
- かかる時間
- 申込フォームは「60秒でカンタン入力」と公式サイトに書かれています
- 分かること
- 買取の査定金額。相談から3営業日以内に提示すると公式のよくある質問に書かれています
- 申込後の連絡
- 「しつこい営業は行いません」と公式サイトに書かれています。荷物やごみが残ったままでも買い取れる、とも書かれています
上の内容はワケガイの公式サイトとよくある質問に書かれていることです(2026年10月26日に確認)。山林や田・畑など宅地として使えない土地や、賃貸の需要がまったくないエリアの不動産は、買取が難しい場合があると書かれています。
よくある質問
家が建ったままでも申請できますか?
できません。建物の登記がなくても、建物があれば申請できないと法務省のQ&Aに書かれています。原則として取り壊してから申請します。申請後すぐに取り壊す予定なら、申請先の法務局に問い合わせるよう案内されています。
相続登記をしていなくても申請できますか?
相続か遺贈で取得していれば申請できます。所有者であることを示す書類(戸籍事項証明書など)を付けます。却下・不承認・取下げになったときは、相続登記が必要になります(法務省のQ&A)。
不承認になったら、手数料は戻りますか?
戻りません。審査手数料は、取下げ・却下・不承認のどれでも返されません(法務省)。
相談にお金はかかりますか?
法務省の相談のページには、相談の料金の記載がありません。予約はインターネットの法務局手続案内予約サービスからで、1人1日1回30分です。
申請の書類は、誰に頼めますか?
書類の作成を代わりに頼めるのは、弁護士・司法書士・行政書士だけです。申請の手続きそのものは、所有者本人か法定代理人がします(法務省のQ&A)。
出典
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」(2026年10月26日に確認)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度に関するQ&A」(2026年10月26日に確認)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」(2026年10月26日に確認)
- 法務省「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(制度の説明資料)(2026年10月26日に確認)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度」(パンフレット)(2026年10月26日に確認)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の相談対応について」(2026年10月26日に確認)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」(2026年9月30日現在)(2026年10月26日に確認)
- 福岡法務局「相続した土地の国庫帰属をお考えの方へ」(2026年10月26日に確認)
- 裁判所「相続の放棄の申述」(2026年10月26日に確認)
- 名古屋市「不動産の寄附(遺贈を含む)について」(2026年10月26日に確認)
- 国土交通省「全国版空き家・空き地バンク」(2026年10月26日に確認)
- ワケガイ(公式)(2026年10月26日に確認)
- ワケガイ「よくある質問」(2026年10月26日に確認)